隅返しを極める!柔道の投げ技を実戦で決めるためのコツと練習方法

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柔道の試合において、自分より大きな相手や力が強い相手をどのように投げるかは永遠の課題です。その解決策として非常に有効なのが、真捨身技の一つである隅返しです。この技をマスターすることで、通常の投げ技では崩せない相手に対しても、劇的な逆転の一手を打つことが可能になります。

項目 隅返しの重要ポイント
技の分類 真捨身技(自分の体を捨てて投げる技)
得意な状況 相手が前に押し返してきた時や、極端な防御姿勢の時
習得のメリット 体格差を無効化し、寝技への移行もスムーズに行える

隅返しは単なる奇襲技ではなく、理合に基づいた高度な技術です。本記事では、初心者から上級者までが活用できる隅返しの極意を、理論と実践の両面から詳しく解説していきます。この記事を読み終える頃には、あなたの得意技リストに隅返しが加わっているはずです。

隅返しの基本原理と効果的な入り方

隅返しを成功させるためには、まず技の根本的な仕組みを理解する必要があります。なぜ自分の体を後方に投げ出すことで相手が飛んでいくのか、その物理的なメカニズムを知ることが上達への近道となります。ここでは、技の定義から具体的な動作の基本までを5つの視点で深掘りしていきます。

隅返しとは?技の定義と特徴

隅返しは、柔道の投技の中でも真捨身技に分類される非常にダイナミックな技術です。相手の重心を前方に崩し、自らの体を後方に投げ出す勢いを利用して相手を頭越しに投げ飛ばすその動きは、理にかなった力の伝え方が求められます。この技を習得することで、立ち技の攻防において非常に強力な選択肢を持つことができるようになります。
隅返しの最大の特徴は、相手が防御に徹して腰を引いている状態や、逆に強く押し込んできている状態の両方に対応できる汎用性にあります。特に、巴投と混同されやすいですが、隅返しは相手の「隅(斜め前)」に自分の足の甲を掛けて跳ね上げる点が決定的な違いです。この斜めのベクトルを利用することで、相手の回転をより確実に制御することが可能になります。

相手を崩すための引き手と釣り手の役割

隅返しにおける組み手の役割は、他の投げ技以上に重要です。引き手は相手の腕を自分の体に引き寄せ、密着度を高める役割を担います。これにより、自分の体が沈み込む際に相手の重心を強制的に前方へ移動させることができます。引き手が緩んでしまうと、自分の体だけが下に落ちてしまい、相手を投げるための回転軸が作れなくなるため注意が必要です。
一方の釣り手は、相手の奥襟や背中をしっかりと確保することが推奨されます。釣り手で相手の体を引き下げるように圧力をかけることで、相手は反射的に姿勢を戻そうと上に伸び上がります。この「押しと引き」の反応を利用した崩しが、隅返しを成功させるための鍵となります。釣り手の肘を畳むようにして相手の懐に潜り込む感覚を養うことが、実戦での成功率を大きく左右します。
組み手が不十分な状態で技を仕掛けると、相手に押し潰されて抑え込まれるリスクが高まります。そのため、まずは自分の有利な形を作り、相手の動きを制限した瞬間に仕掛けることが鉄則です。引き手で相手の肘をコントロールし、釣り手で相手の頭を下げさせることで、隅返しへの完璧な準備が整います。この一連の流れを無意識に行えるまで反復練習を行うことが大切です。

自分の体を沈めるタイミングと足の位置

隅返しを決めるためには、自分の体を沈めるタイミングが極めて重要です。相手の重心がわずかでも前方に傾いた瞬間を逃さず、自らの背中を畳につけるように深く潜り込みます。このとき、怖がって中途半端な位置に背中をついてしまうと、相手を飛び越えさせることができず、自爆に近い形になってしまいます。勇気を持って相手の股間の下まで自分の腰を滑り込ませる感覚が不可欠です。
足の位置に関しては、軸足となる方の足を相手の足の間に深く踏み込み、もう一方の足(掛け足)を相手の太ももの内側や足の付け根付近に当てます。この掛け足が、相手を跳ね上げるレバーの役割を果たします。足の甲を相手の体に密着させ、自分の膝を柔らかく使うことで、相手の重さを自分の足全体で受け止めることができます。
足の指先まで意識を集中させ、相手をどの方向に回転させるかを明確にイメージしてください。基本的には相手の斜め前方の隅に向かって跳ね上げるようにします。自分の体が畳に接した瞬間に、掛け足を力強く斜め上方に突き出すことで、相手は円を描くように空中を舞います。この沈み込みと跳ね上げの連動が、隅返しの美しさと威力を生み出すのです。

後ろに倒れ込む際の重心移動のコツ

重心移動は、隅返しにおける動力源です。単に後ろに倒れるだけでは、相手を投げるためのエネルギーが不足します。倒れ込む際には、自分の顎を軽く引き、背中を丸めるようにして「ボールが転がるようなイメージ」で動作を行うことがポイントです。これにより、落下のエネルギーを回転のエネルギーへとスムーズに変換することができます。
また、倒れ込む方向も重要です。真後ろではなく、わずかに斜め後ろに重心を移動させることで、相手の体を自分の体の上を通過させやすくなります。このとき、自分の腰が畳につく前に、すでに相手が浮き始めている状態が理想的です。重力に逆らわず、むしろ重力を味方につけることで、最小限の力で大きな相手を投げ飛ばすことが可能になります。
重心移動の最中に、引き手と釣り手を緩めないように意識し続けてください。自分の体が畳に近づくにつれ、腕の引きをさらに強めることで、相手との密着度を極限まで高めます。この密着こそが、相手の逃げ道を塞ぎ、確実に一本を取るための秘訣です。重心移動のスピードと、腕の引きの強さを同調させることが、隅返しの完成度を高めることに繋がります。

成功率を高めるための相手の反応の引き出し方

隅返しを成功させるには、相手に「投げられる準備」をさせる心理戦も必要です。例えば、大内刈や小内刈などの足技を積極的に仕掛け、相手の意識を下に向けさせます。相手が足技を警戒して腰を落としたり、足を引き気味にしたりした瞬間は、隅返しの絶好のチャンスです。相手の防御反応を逆手に取ることで、技の入り口を広く確保することができます。
また、意図的に相手を押し込み、相手がそれに抗って押し返してくる力を利用するのも効果的です。相手が強く押し返してきた瞬間、その力を利用して自ら後ろに沈み込めば、相手の勢いがそのまま投げの威力に加算されます。柔よく剛を制すという柔道の精神を具現化したような入り方であり、非常に効率的な攻撃手段となります。
さらに、フェイントとしての動作も重要です。巴投を仕掛けるような素振りを見せ、相手が足を割って防御したところを、隅返しに切り替えるといったバリエーションも有効です。相手に次の動きを予測させないことが、成功率を高めるための最大の武器となります。日々の乱取りの中で、どのような予備動作が相手の反応を引き出しやすいかを研究してみてください。

実戦で役立つ隅返しのバリエーション

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基本の隅返しを習得したら、次は実戦の多様な状況に対応するためのバリエーションを学びましょう。試合では理想的な組み手になれることは稀であり、変則的な形からでも技を繰り出せる能力が求められます。ここでは、特に決定率が高い3つの応用パターンを紹介します。それぞれの特徴を理解し、自分のスタイルに合ったものを取り入れてみてください。

帯取り隅返しによる強力なコントロール

帯取り隅返しは、その名の通り相手の帯を掴んで仕掛けるバリエーションです。通常の釣り手で襟を持つよりも、相手との距離を格段に縮めることができるため、密着度が非常に高くなります。相手の帯を上から、あるいは脇の下から掴むことで、相手の腰の動きを完全に封じ込めることが可能です。この状態からの隅返しは、相手にとって逃げ場がなく、極めて脱出が困難です。
帯を掴んだ手で相手を引き上げつつ、自分の体を相手の懐深くに潜り込ませます。帯を持つことで自分の腕が強固な支点となり、自分の体重をよりダイレクトに相手に伝えることができます。国際試合でもよく見られるこの技術は、特にパワーのある相手を封じ込めるために重宝されます。帯を掴む際の指の力や、手首の返しを意識することで、コントロールの精度はさらに向上します。
ただし、帯を掴み続けることによる指導(反則)には注意が必要です。ルール改正により、帯を掴んでから技を仕掛けるまでの時間制限が厳格化されている場合があります。帯を掴んだら、迷うことなく瞬時に隅返しへと移行する判断力が求められます。このスピード感こそが、帯取り隅返しを成功させるための実戦的なポイントとなります。一瞬のチャンスを逃さず、爆発的な動きで相手を翻弄しましょう。

相手の背中を抱えて投げる応用パターン

相手と相四つの状態になった際、釣り手で相手の肩越しに背中を深く抱え込む形からの隅返しも非常に強力です。この形は、相手の頭を自分の胸元に固定できるため、相手の視界を奪い、バランスを崩しやすくする効果があります。背中を抱え込むことで、相手は上半身の自由を失い、自分の回転運動に強制的に巻き込まれることになります。
この応用パターンのコツは、抱え込んだ腕をしっかりと自分の脇に締め、相手の体を自分の一部にするように一体化させることです。投げの瞬間に、抱え込んだ手で相手を自分の背中側に引き寄せるようにすると、回転がより鋭くなります。重量級の選手が好んで使用するこのテクニックは、相手の重さを利用してそのまま押し潰すような迫力があります。
また、この形は隅返しが不発に終わったとしても、そのまま寝技の抑え込みに移行しやすいという利点があります。相手の背中を抱えたまま畳に転がれば、自然と袈裟固や上四方固の形を作りやすいため、立ち技から寝技への一貫した攻めを構築できます。失敗を恐れずに仕掛けられることが、このバリエーションの精神的な強みでもあります。練習では、投げた後のフォローアップまでをセットで行うようにしましょう。

ケンカ四つの状態から仕掛ける変則隅返し

右組みと左組みが対峙するケンカ四つの状態では、通常の隅返しとは異なるアプローチが必要です。お互いに釣り手が外側から回し合うような形になりやすいため、その釣り手の位置を利用して技を仕掛けます。ケンカ四つの場合、相手の懐に入りやすい反面、相手の足が邪魔になりやすいため、足の掛け方を工夫する必要があります。
具体的には、相手の釣り手側の足を狙って掛け足を当てることが一般的です。自分の体軸を少しずらしながら、相手の側面に回り込むような感覚で沈み込むと、相手の防御を突破しやすくなります。ケンカ四つでの隅返しは、相手にとって予測しづらい角度から技が飛んでくるため、決まれば非常に鮮やかな一本となることが多いです。
この際、引き手で相手の腕を自分の腹の下に巻き込むようにすると、相手のバランスを劇的に破壊できます。ケンカ四つの攻防では組み手争いが激しくなりますが、一瞬の隙を突いてこの変則隅返しを繰り出すことができれば、試合の流れを一気に引き寄せることができます。複雑な組み手の中でも冷静に相手の足の位置を見極め、最適なタイミングで潜り込む練習を重ねてください。

隅返しから連絡技へのスムーズな移行

柔道の醍醐味は、一つの技で終わらない連続攻撃にあります。隅返しは、技の特性上、投げ終わった後に自分が下、あるいは相手と密着した状態になることが多いため、寝技への移行が非常にスムーズに行える技です。投げで一本を取れなかった場合でも、そこから先の攻防で勝利を掴むための連絡技について解説します。隙のない攻撃こそが勝利への近道です。

投げ損じた後の寝技への連携

隅返しを仕掛けて相手が完全に回らなかった場合、あるいは相手が手をついてこらえた場合、そこは寝技のスタート地点となります。隅返しは自分の体を捨てているため、失敗すれば自分が下になるリスクがありますが、あらかじめ連携を考えておけば、その状況を有利に変えることができます。相手が耐えた瞬間に、引き手を離さず相手の腕を制したまま、即座に引き込みを狙います。
特に、相手の腕を抱えたままの状態で三角絞めや腕ひしぎ十字固めに移行するパターンは非常に効果的です。相手は投げを防御することに意識が集中しているため、足の動きに対する警戒が疎かになりがちです。そこを狙って、自分の足を相手の首や腕に絡めることで、一気に一本を狙うことができます。投げの動作から関節技への移行を一つの流れとして練習することが重要です。
また、相手が四つん這いになって耐えた場合は、そのまま相手の背後に回り込むか、あるいは相手の脇の下を潜って崩し、抑え込みを狙うことも可能です。隅返しで崩れた相手の姿勢は不安定であり、そこからの抑え込み移行は成功率が高いです。立ち技から寝技への「繋ぎ」の部分でスピードを落とさないことが、相手に反撃の隙を与えないための鉄則となります。常に次の展開を予測して動きましょう。

隅返しをフェイントにした他の投げ技

隅返しの動きをフェイントとして使い、他の立ち技を仕掛けることも高度な戦術です。隅返しを仕掛けるために腰を沈める動作を見せると、相手は投げられるのを防ぐために腰を落とし、重心を低くします。この「下に沈む反応」を利用して、逆に上方向や前方向への技を仕掛けます。例えば、隅返しから見せかけて、即座に立ち上がり大内刈や内股へ連絡する形です。
このフェイントが効く理由は、隅返しという捨て身技の圧力が相手にとって非常に脅威だからです。一度隅返しの恐怖を植え付けることができれば、わずかな予備動作だけで相手の体勢を崩すことができます。相手が後ろにのけ反るように防御すれば、そのまま前に押し出す技が面白いように決まります。逆に、相手が前に突っ込んできたら、本命の隅返しで仕留めるという二段構えの攻撃が可能になります。
練習では、フェイントの動作を本気で行うことが大切です。中途半端な動きでは相手を騙すことはできません。本気で隅返しに行く姿勢を見せるからこそ、相手は必死に防御し、そこに新たな隙が生まれます。一つの技に固執せず、相手の反応を見ながら柔軟に技を切り替えるセンスを磨くことが、柔道家としての幅を広げることに繋がります。常に相手との対話を意識しましょう。

相手の防御を逆手に取った連続攻撃

隅返しに対する代表的な防御法は、足を大きく開いて踏ん張るか、あるいは自ら前に飛び込んで投げの回転を止めることです。これらの防御反応を逆手に取った連続攻撃も存在します。相手が足を広げて耐えようとした場合、掛け足の位置をずらして相手の膝を内側に押し込むようにし、そのまま横に転がすような変化技へと繋げることができます。
また、相手が投げを回避しようとして無理に体を捻った場合、その捻りの力を利用して逆方向へ投げることも可能です。隅返しは相手をコントロールする力が強いため、相手が抗えば抗うほど、そのエネルギーを自分の技に転換しやすくなります。相手の防御のベクトルの向きを瞬時に判断し、その力を逃がさずに自分の技の威力に上乗せする感覚を掴んでください。
連続攻撃の要は、自分のバランスを崩さないことです。捨て身技でありながら、常に自分の体の中心を意識し、次の動き出しができる余裕を持っておく必要があります。これは体幹の強さと、柔軟な身のこなしがあって初めて実現できる技術です。日頃の基礎トレーニングに加え、実戦形式の練習で様々な防御パターンを経験し、それに対する解答を自分の中に蓄積していきましょう。それが真の強さへと繋がります。

隅返しを練習する際の注意点と上達の秘訣

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隅返しは非常に強力な技ですが、自分の体を捨てるという性質上、適切な練習方法を守らなければ怪我のリスクも伴います。また、間違った癖がついてしまうと、実戦で全く通用しなくなるばかりか、相手にチャンスを与えてしまう結果にもなりかねません。ここでは、安全に上達するための注意点と、効率的な練習の秘訣について3つの項目で解説します。

捨て身技特有のリスクと回避方法

隅返しを練習する際、最も注意すべきリスクは自分自身の頭部や首への衝撃です。後ろに倒れ込む勢いが強すぎたり、顎が上がった状態で倒れたりすると、後頭部を畳に強く打ちつける危険があります。これを防ぐためには、受身の基本である「顎を引く」「背中を丸める」を徹底することが不可欠です。初心者のうちは、分厚いマットなどを使用して、恐怖心を取り除きながら練習することをお勧めします。
また、相手を投げる際、相手が不完全な回転で自分の上に落ちてくるリスクもあります。これは「潰される」状態であり、肋骨の骨折や呼吸困難などの怪我に繋がる可能性があります。回避するためには、十分な崩しを行い、相手を自分の体の上を通過させるための十分な空間を確保しなければなりません。力任せに投げるのではなく、遠心力と回転の理を正しく使うことを意識してください。
さらに、膝の怪我にも注意が必要です。掛け足を相手に当てる際、無理な角度で力を入れると、自分の膝や足首に過度な負担がかかることがあります。足の甲で柔らかく相手を捉える感覚を養い、関節に無理な力がかからないような体の使い方を学んでください。安全こそが上達への最短ルートであることを忘れず、無理のない範囲から徐々に強度を上げていく練習を心がけましょう。

初心者が陥りやすい失敗例と改善策

初心者が隅返しでよくやってしまう失敗の一つに、「沈み込みが浅い」ことが挙げられます。相手を怖がって自分の腰を相手から離した位置で倒れてしまうと、相手を跳ね上げるための力が伝わりません。その結果、ただ自分が座り込んだような形になり、相手に簡単に抑え込まれてしまいます。改善策としては、打ち込みの段階から、自分の尻を相手の踵のすぐ近くまで滑り込ませる練習を繰り返すことです。
次に多いのが、「腕の引きが弱い」ことです。足の力だけで投げようとしてしまい、引き手と釣り手が緩んでしまうと、相手との密着が解けて投げがバラバラになります。投げの最初から最後まで、相手を自分の胸に引き寄せ続ける意識を持つことが重要です。腕の力だけでなく、広背筋などの背中の筋肉を使って相手をコントロールする感覚を身につけると、技のキレが劇的に向上します。
また、「タイミングの誤り」も致命的な失敗を招きます。相手が後ろに重心がある時に無理に仕掛けても、隅返しは決まりません。相手が前に出てくる、あるいは自分が引き出した瞬間に合わせる必要があります。このタイミングを掴むためには、動いている相手に対して仕掛ける移動打ち込みや、軽い乱取りの中で技に入る感覚を養うことが効果的です。失敗から学び、なぜ決まらなかったのかを分析する姿勢を持ちましょう。

一人でできるイメージトレーニングの手法

隅返しのような複雑な動きを伴う技は、イメージトレーニングが非常に有効です。畳の上でなくても、自分の体の動かし方や重心の移動を頭の中でシミュレートすることで、神経系を鍛えることができます。まずは、理想的な隅返しの動画を何度も繰り返し視聴し、自分があたかもその選手になったかのような感覚で、技の入りから投げ終わりまでを細部までイメージします。
次に、実際に立ち上がって、一人でシャドー(空打ち込み)を行います。組み手の位置、足の運び、沈み込みの深さ、そして足を跳ね上げる角度を一つずつ確認しながら、ゆっくりと動作を行います。このとき、架空の相手が自分の動きにどう反応しているかまで想像することがポイントです。自分の体の各部位がどう連動しているかをスローモーションで意識することで、脳内の運動プログラムがより精緻化されます。
さらに、寝る前やリラックスしている時に、最高のタイミングで隅返しが決まり、審判が「一本」を宣告するシーンを強烈にイメージしてください。この成功体験の刷り込みは、本番での自信に直結します。イメージトレーニングは場所を選ばずに行えるため、隙間時間を見つけて継続的に行うことが上達の秘訣です。理論を頭に叩き込み、イメージを鮮明にすることで、実際の練習での吸収率が飛躍的に高まります。

隅返しの対策と防御のポイント

隅返しを自分の武器にするためには、逆に相手が仕掛けてきた時にどう守るかを知っておくことも重要です。防御の理屈を知ることは、技の弱点を知ることに他ならず、それがひいては自分の攻撃の精度を高めることに繋がります。ここでは、隅返しを無効化するための実戦的な防御テクニックと、その際の組み手の重要性について解説していきます。

相手が仕掛けてきた時の重心の残し方

隅返しを仕掛けられた際、最も重要なのは「重心を前に持っていかれないこと」です。隅返しは相手を前方に崩すことで成立する技であるため、相手が沈み込もうとした瞬間に、自分の腰を後ろに引き、重心を踵側に移動させることで投げのエネルギーを相殺できます。相手の沈み込みに合わせて自分も素早く腰を落とし、どっしりと構えることが防御の基本となります。
このとき、顎を引いて背中を真っ直ぐに保つことも重要です。頭が前に突っ込んでしまうと、相手の引きの力に抗えず、そのまま回転させられてしまいます。相手の引きの方向に対して垂直に姿勢を保つイメージで耐えることで、相手は自分の重さを支えきれず、自爆するような形になります。重心のコントロールは、一瞬の判断力が問われるため、日頃から姿勢の崩れない構えを意識することが大切です。
また、相手の足が掛かった瞬間に、その足を自分の手で押し下げる、あるいは自分の腰を捻って足の掛かりを外す動作も有効です。相手の掛け足が支点を失えば、隅返しは成立しません。足の感触を敏感に察知し、相手がどの角度で跳ね上げようとしているかを瞬時に読み取って対応しましょう。冷静に状況を判断し、相手の勢いを自分の重心で受け止める強さを養ってください。

返し技を狙うための足の捌き方

隅返しの防御に成功した後は、絶好のカウンターのチャンスとなります。相手が畳に背中をついた瞬間、自分はまだ立っている、あるいは膝をついた状態であれば、そこから一気に抑え込みや返し技を狙うことができます。相手の掛け足を自分の手で払いながら、相手の横側に回り込むように足を捌くのがコツです。これにより、相手の回転の円の外側に出て、制圧することができます。
相手が隅返しを仕掛けようとして自ら倒れ込む動きを利用し、そのまま上から押し潰すようにして大内刈や小内刈、あるいはそのまま抑え込みに入る「小外掛け」のような返し技も有効です。相手の捨て身の勢いを、自分が上から蓋をするような感覚で制し、相手のコントロールを奪います。この際、自分の胸と相手の胸を密着させ、相手が次の動きに移れないように圧力をかけ続けることが一本への鍵となります。
足捌きにおいては、相手の足の間に自分の足が挟まれないように注意してください。挟まれてしまうと、相手の寝技のペースに巻き込まれる恐れがあります。常に軽快なステップを保ち、相手の動きの先を見て、自分が常に有利なポジションを確保できるよう意識して練習しましょう。返し技は、相手の攻撃を最大のチャンスに変える高度な技術です。防御からの素早い切り替えを体に覚え込ませてください。

隅返しを無効化する組み手の優位性

最強の防御は、技を仕掛けられる前にその芽を摘むことです。隅返しを防ぐためには、組み手争いで優位に立つことが何よりも重要です。相手に襟を深く持たせない、あるいは帯を掴ませないように徹底してディフェンスを行います。相手の引き手をしっかりと切り、自分の釣り手で相手の肩や胸を抑えて距離を取ることで、相手は沈み込むための空間を確保できなくなります。
特に、自分の腕を突っ張るようにして相手の懐を閉ざす「フレーム」を作る技術が効果的です。相手が無理に潜り込もうとしても、このフレームがある限り、自分の重心を崩されることはありません。また、相手の頭を下げさせるように釣り手で圧力をかけ続ければ、相手は上を向いて沈み込む隅返しの予備動作ができなくなります。組み手で主導権を握ることは、攻撃だけでなく防御においても最大の武器となります。
組み手の中で相手の狙いを察知する洞察力を磨いてください。相手が特定の持ち方をした時や、足の踏み込みが深くなった時は、技の予兆です。その瞬間に組み手を持ち替えたり、位置をずらしたりすることで、相手のプランを白紙に戻すことができます。柔道は組み手が8割と言われるほど重要であり、隅返しへの対策もその例外ではありません。日々の練習から組み手の細部にこだわり、相手に隙を見せない姿勢を貫きましょう。

まとめ

隅返しは、そのダイナミックな動きと高い実用性から、柔道の技術体系の中でも非常に魅力的な技です。基本となる「崩し」「沈み込み」「跳ね上げ」の理合を正しく理解し、練習を積み重ねることで、自分より大きな相手をも一瞬で投げ飛ばす爽快感を味わうことができるでしょう。実戦では基本だけでなく、今回紹介した帯取りやケンカ四つでのバリエーション、そして寝技への連絡技を組み合わせることで、より隙のない攻撃が可能になります。
一方で、怪我のリスクを避けるための安全な練習や、相手の防御を知ることも上達には欠かせません。常に学ぶ姿勢を持ち、自分の技を客観的に分析し続けることが大切です。この記事で学んだ知識を、明日からの畳の上での練習に活かしてください。まずは軽い打ち込みから始め、徐々に実戦に近い形へと移行していきましょう。あなたの柔道が隅返しという新たな武器を得て、より力強く輝くことを期待しています。次のステップとして、まずは道場の先生や先輩に隅返しの形をチェックしてもらうことから始めてみてはいかがでしょうか。

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